
「好き嫌いしないで、食べなさい!」
小さい頃は、怒られても怒られても嫌だった。
だって、くさいんだもの。
今、そんな私が蕗を煮る。
ふふふふ、っと、笑ってしまう。
ガーデンの日陰で育つ山蕗、
この季節、最も柔らかで、香りもよい。
「昔はなぁ、俺も大嫌いだったぁ~!」
笑うのは主人。
「それがさぁ、毎日毎日お弁当に入ってるんだよ!
しかも煮汁がこぼれてな~、
お陰でカバンを開ければ蕗のにおい、教科書には蕗のしみ!
忘れもしない、ガロアの複素数のページがぁああ~!!」
蕗には、実山椒。
毎年3時間かけ、娘達と実と枝をわける。
極みの白しょうゆで、品のよい緑色に煮含める。
「私達は大好きだよ!」
「ね~!」
子供達は、目を合わせて笑う。