4.07.2010

鯉櫻

The Sakura at my Garden
   

    少し前のこと。
うっそうと茂る薮の中。
今正に息途絶えゆく、
大きな老木と出会った。

枝々は光の届かない薮に埋もれ、
人の腕程に木化した蔦のツルは、
遂には天頂を折り返し絡み、
益々老木を締め上げていた。

既に耐えかねた太い枝々は、
どっさりと、足元に朽ちていた。

何と、これが櫻とは。

春夏秋冬、幹の陰。
木肌に触れ、
耳を押し宛て、
寄り添って。
命を委ねる精霊と、
想い寄せる櫻守り。


2010年のこと。
光満ちる羽衣の袂。
光陰の矢にいのちを燃やす、
美しい精霊と再会した。



















ひとひらの花びらに ひとつの世界
 
一輪のさくらに ひとつの浮き世をみる


手のひらに無限を乗せ


一時のうちに 永遠を感じる




















兵庫県たつの市室津
見上げれば、その姿は滝登りの鯉のようであることから、
鯉櫻と命名。どうぞこの櫻が永年守られ続けますように。